湖沼や河川の研究

 湖沼や河川のような淡水が占める水域を陸水域といいますが、これらの水域に生息する微生物群集について研究を行っています。私の専門が光合成生物であるため、湖沼では主に植物プランクトン、河川では付着藻類を対象とし、各水域での微生物食物連鎖での寄与率や各藻類の生態に注目し研究を行っています。私が大学院生であった1990年代後半は、オゾン層の破壊による太陽紫外線の増加が陸上の動植物や水界の生物に与える影響が懸念されていました。そこで河川の付着藻類を材料として扱い、付着藻類と付着バクテリアの紫外線感受性の違い、付着微生物群集形成過程における付着バクテリアと付着藻類の相互作用に注目し研究を進めました。

 湖沼については、アオコを形成するシアノバクテリアの研究を中心に行っています。それ以外にも、クリプト植物門のクリプトモナス(Cryptomonas)属の生態や分子系統地理についても興味を持っています。クリプトモナスは、独立栄養の植物プランクトンで貧栄養から富栄養な湖沼に出現し、形態も多様であるため、多くの研究者によって分類学的な研究が行われてきました。その一方で、近年の分子生物学的手法を用いた研究により、本属には従属栄養の種が含まれること、クリプトモナス属のある種は二形性を示し、以前、カンピロモナス属とされていた種は、クリプトモナス属のある種の一生態型であることが明らかとなり、18S rDNAの塩基配列情報などを基に、分類体系が大幅に見直されました。日本でもクリプトモナスに関する研究は古くからおこなわれていますが、分子生物学的情報に基づいた再検討が必要だと考えています。その一環で、琵琶湖の内湖の一つの平湖で本属の種の構成と季節変化をSingle-cell PCRという手法を用いて調べたところ、これまで日本では報告されていなかった種が2種、世界的にも単離培養されていない未同定と考えられる2系統が検出されました。一カ所の湖からですらこれほど未報告・未同定の種が検出されたのですから、対象とする湖沼を広げ、もっと詳細な研究が必要と考えています。

 藻類以外にも、湖沼の様々な微生物について研究を進めています。ひとくくりに水界の微生物といっても、多種多様な生物で成り立っています。そのため、水界の生態系や食物網を理解するためには、これら微生物の多種多様な相互作用を明らかにする必要があり、ひとつの分類群の生物だけをひたすら研究しているだけでは、全体像を理解することができません。もちろん、すべてを自分自身だけで出来るとはおもっていませんが、他の研究者や学生さんと協力して研究を進めていきたいと思います.

共同研究テーマ

・滋賀県琵琶湖など国内の水深の深い湖での原生生物の種組成変化(NGSを使用)

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